トップメッセージ

微粒子と、人の可能性を信じて、新しい価値の創造に挑み続けます。

成長の起点は、次世代を見据えた取組み

当社は1823年に磁器の絵付けや漆器、歴史的建造物などに欠かせない赤色顔料であるベンガラの製造業として創業しました。当時のベンガラは、鉱山からの副産物である硫化鉄鉱を焼く、砕く、すり潰すなど手作業での加工を繰り返して生産されていました。その後、当社グループは、湿式合成をはじめとする独自の微粒子合成技術を確立し、酸化鉄を主軸にさまざまな企業に無機材料を提供しています。

創業からの歴史を振り返りますと、当社グループは社会ニーズの変化とともに、新しい材料やソリューションを開発、提供してまいりました。その背景には、お客様ニーズが起点であると同時に、常に次世代を見据える当社グループの経営姿勢があります。一例として、私が入社した1984年は、磁気記録材料がオーディオカセットテープの普及により事業拡大していた時代でしたが、当時の経営陣は、既に次の社会ニーズを見据えた研究開発とマーケティングの取組みを強化していました。その取組みは、磁気記録材料に続く、複写機・プリンター用材料の立ち上げにつながりました。当時、複写機・プリンター市場での磁性トナーを用いた新技術導入をいち早くつかみ、求められる材料を開発、製造することで、需要に応えることができました。その後も、成長が期待される市場への取組みとして、リチウムイオン電池(LIB)用材料の製造に挑戦しました。磁気記録材料で培った微粒子合成技術により開発したLIB用材料は、携帯電話・パソコン用途に始まり、現在では電気自動車向けの電池材料として供給しています。現在、成長事業として位置づけている磁石材料、誘電体材料も、磁気記録材料の成熟を見越し開発を進めてきた材料です。磁石材料は自動車の電動化などにより需要が高まっているモーター、センサー用途として、また誘電材材料は、スマートフォン等に用いられる積層セラミックコンデンサーの小型化ニーズに対応する材料として拡大しています。このように、当社グループは常に社会の変化を見据え、次に社会で求められるものは何か、コアコンピタンスである微粒子合成技術をいかに新しいニーズとつなげるかを考えながら、成長を続けてきました。

中長期を見据えた成長ビジョン

現在、当社グループは2021年4月から3カ年の中期事業計画 Vision 2023を推進するとともに、2024年度以降のGo Beyond 200を掲げています。機能性顔料事業を基盤事業として収益力を高めていきます。電子素材事業では磁石材料、誘電体材料、LIB用材料を成長事業として拡販を進めてまいります。軟磁性材料、環境関連材料を次世代事業として事業化に向けて取り組んでまいります。

環境負荷低減につながる環境関連材料事業

当社における環境関連材料事業は1990年代から始まります。当時はゴミ焼却場からのダイオキシンの排出が社会問題となっていました。当社は酸化鉄の完全燃焼を促進する機能を活用して、ダイオキシン抑制燃焼触媒を開発、提供しました。2000年代から、当社は、大学等と連携し、鉄系触媒等を活用してメタンを原料にCO₂を発生させずに水素と炭素(カーボンナノチューブ)を生成するDMR(メタン直接改質)法を開発しました。2023年8月、この技術を用いて、北海道豊富町にてメタンを含む天然ガスから水素を商用規模で生産する国内初の実証実験が始まっています。この実証実験を着実に進めながら、将来の国内外での環境関連事業の拡大を推進してまいります。

サステナビリティ経営の実現のための人材戦略

当社グループがサステナビリティ経営を実現するためには、ESGへの取組みも重要です。ガバナンスの面では取締役会の透明性や独立性を強化するとともにグループガバナンスの強化にも取り組んでいます。また、環境面における自社の取組みとして温室効果ガス排出量削減目標を開示するとともに、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」のフレームワークで要求されているシナリオ分析を進めています。

特に力を入れているのが人材戦略です。当社は、従業員全体の1/3が開発に携わる技術立社です。今後も独自の微粒子合成技術を磨き続けるためにも人材投資を続けると同時に、部署間のローテーションを通じて人を循環させながら、さまざまな役割を担う“技術集団”を維持することが重要だと認識しています。従業員全員に化学的な素養を求めているわけではありません。何よりも大切な資質は「新しい価値の創造」に向けた熱意とモチベーション、周囲の人々と協力しながら素直に真面目に仕事に取り組む姿勢だと考えています。

パーパス経営で社会を支える

創業200周年を迎えるにあたり、2023年1月に当社グループはパーパス(存在意義)「微粒子の可能性を、世界の可能性に変えていく。」を制定しました。制定にあたっては中堅・若手従業員が中心となって当社グループの将来について議論を重ねました。ステートメントの一文に「一粒の微粒子には、無限大の可能性がある。」とあるように、当社グループは創業以来、未来への希望となる新しい価値の創造に挑み続けてまいりました。当社グループは、これからも日々の生活や社会を支える社会的役割を果たすため、微粒子と人の可能性を信じて邁進してまいります。そしてステークホルダーの皆様のご期待にお応えできるよう、従業員と共に事業活動を通じて、社会的な課題解決の支援を行い、当社グループの持続的成長を目指してまいります。今後とも、ご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

代表取締役社長執行役員
寳來 茂