TCFD提言に基づく気候関連の情報開示

TCFD提言への賛同表明

当社グループは、将来の世代も安心して暮らせる持続可能な経済社会をつくるため、気候変動を経営上の重要課題とし、地球温暖化対策に取り組んでいます。

また、TCFDが推奨するフレームワークに従い、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」に関する情報を公開しています。

ガバナンス

気候変動対応への全社的な推進・管理に向けて、リスク管理委員会(委員長:代表取締役社長執行役員)の直下に、CSR・環境委員会を設置し、国内グループの環境に関する統括管理を実施しています。

取締役会は、リスク管理委員会からの報告を通じて気候変動への対応状況を確認し、必要な体制・制度の構築について決定・監督を行っています。CSR・環境委員会は、委員長を経営企画室長が担当し、全社横断的な各事業所の責任者および担当者で構成しています。

気候変動の管理体制
戦略

世界全体の気温が4℃上昇すると、不可逆的かつ深刻な環境破壊をもたらすことが予想されています。気温上昇を1.5℃未満までに抑えることを目指すパリ協定を踏まえ、当社グループでは、1.5℃シナリオと2℃シナリオおよび4℃シナリオにて、リスクと機会を分析しました。

1.5℃/2℃シナリオ

全世界が2050年カーボンニュートラルを目指した規制や政策を強化し、現状を上回る気候変動対策が実施され、平均気温上昇が産業革命前の水準から1.5~2.0℃程度に収まるシナリオです。

  • 規制や政策への対応コスト発生および再生可能エネルギー電力価格上昇などの移行リスクが増加
  • 物理的リスクの増大も想定されるものの、4℃シナリオよりも影響は軽微
  • 情報源:IEA※1 WEO※2 2022のNZEシナリオ※3 およびIPCC※4 RCP※5 1.9、RCP2.6など
4℃シナリオ

現状を上回る気候変動対策が取られず、平均気温上昇は産業革命前の水準から4℃程度まで上昇するシナリオです。

  • 異常気象の激甚化による被害増加や気温上昇による熱対策コスト増加などの物理的リスクが増大
  • 移行リスクの増大も想定されるものの、1.5℃/2℃シナリオよりも影響は軽微
  • 情報源:IEA WEO2022のSTEPSシナリオ※6 およびIPCC RCP4.5など
  • IEA:International Energy Agencyの略。国際エネルギー機関。
  • WEO:World Energy Outlookの略。エネルギーの需給や技術開発に関する見通しなどを示したレポート。
  • NZEシナリオ:ネットゼロ排出シナリオ。クリーンエネルギー政策と投資が急増し、先進国は正味ゼロに到達。
  • IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Changeの略。気候変動に関する政府間パネル。
  • RCP:Representative Concentration Pathwayの略。放射強制⼒の代表的な経路。
  • STEPSシナリオ:既存政策シナリオ。現在の政策のみを組み込み、新たな政策がない場合のエネルギーシステム。
主な事業リスクと機会(当社グループ)
下のテーブルはスクロールできます
区分 種類 事業活動への影響 時間軸 評価 対応策
移行リスク(1.5℃/2℃) 政策/法規制 カーボンプライシング(炭素税、排出量取引等)による税負担の増加 中~長期
  • 省エネ推進・再エネ利用拡大によるScope1+2 GHG排出量の削減
  • 投資判断におけるインターナルカーボンプライシングの利用
技術 低炭素化設備・低炭素プロセスへの転換による設備投資の増加 中~長期
  • 低炭素化を意識した製品開発によるライフサイクルコストの低減
  • エネルギー効率の高い粒子合成技術の検討
市場 原材料・エネルギーの調達コストの増加 中~長期
  • 製造工程におけるロスの更なる低減
  • 調達コスト増加について売価への適切な反映
複写機・プリンター使用控えによるトナーの需要減少 中~長期
  • 顧客ニーズの多様化・省エネへの対応によるトナー市場占有率の向上
  • 機能性顔料の技術を活用した環境関連材料への用途展開
評判 気候変動対応への取組みが不十分と評価された場合、顧客、投資家からの評価低下 中~長期
  • GHG排出量の削減推進
  • 情報開示の拡充
物理的リスク(4℃) 急性 自然災害による建物や設備への被害 中~長期
  • BCPの拡充と訓練実施
  • 損害保険の活用
サプライチェーン寸断による工場操業率低下 中~長期
  • BCPの拡充
  • 調達先・搬送ルートの複線化
慢性 海面上昇による沿岸部事業所への追加投資の発生 長期
  • 海面上昇情報のモニタリング
機会 製品/サービス EV市場の拡大によるプラスチックマグネット、チタン酸バリウム及び非接触給電用部材の需要増加 中~長期
  • 市場ニーズに応じた供給体制の構築
  • 研究開発投資の拡充
市場 CCUS市場の拡大に伴うCO₂固体回収材の需要増加 中~長期
  • オープンイノベーションを活用したビジネスモデルの構築
  • 研究開発投資の拡充
  • 公的支援の活用
メタン直接改質法による水素・カーボンナノチューブ供給の需要増加 中~長期

当社グループは、事業継続と2050年ネットゼロを両立させるため、気候移行計画を作成しています。この気候移行計画の適用範囲は日本国内ですが、今後、適用範囲をグループ全体に改める予定です。また、脱炭素技術の発展、関連インフラの普及、環境規制の強化などの要因を加味し、管理・更新をいたします。

2050年までの全体像は以下のとおりです。

気候移行計画 全体像(日本国内)

IPCC 第6次評価報告書では、「気温上昇を1.5℃未満に抑えるためには、2019年対比で2035年までにCO₂を65%削減する必要がある」と指摘されています。当社グループはその指摘を踏まえ、実現可能性と対費用効果の高い施策を優先的に推し進めます。事業再編と省エネ活動によるエネルギー削減を施策の基盤に据え、順次、ボイラー熱源のエネルギー代替にも取り組みます。

具体的な2035年までの施策は、以下のとおりです。

気候移行計画 2035年までの施策(日本国内)
GHG削減コスト 2035年までの施策(日本国内)
投資の概要 2035年までの施策(日本国内)
投資計画

ビジネスの変革

  • 更なる事業再編の推進

Scope1 初期投資額 約13億円

  • 省エネ施策(熱ロス低減)
  • 製造プロセスの変更(エネルギー効率の改善)
  • ボイラーのLPG化
  • ボイラーのLNG化
  • ボイラーの水素化(部分的)

Scope2 初期投資額約1億円

  • 省エネ施策(高効率な照明)
  • 再エネ電力の調達・複線化
資金計画

自己資金だけでなく、ポジティブ・インパクト・ファイナンスなどをはじめとする、サステナブルファイナンスも活用

リスク管理

CSR・環境委員会を毎月開催し、「国内グループの環境に関する統括管理」、「各事業所における年度目標の設定」や「各事業所から毎月の活動報告を通じた進捗管理」を実施しています。また、リスク管理委員会を通じて、取締役会への気候変動対応に関する報告を年2回実施しています。

指標および目標

2050年ネットゼロを目指すため、Scope1+2排出量、売上高基準Scope1+2排出量、再生可能エネルギーの利用率について、挑戦的な2030年の目標を設定しています。本目標の適用範囲は日本国内ですが、今後、適用範囲をグループ全体に改める予定です。

  • ①Scope1+2排出量 22,000 t-CO₂以下(2013年度比で75%削減)
  • ②売上高基準Scope1+2排出量 1.3 t-CO₂/M円以下(2013年度比で70%削減)
  • ③再生可能エネルギーの利用率 17%以上
GHG排出量実績 2024年度(日本国内)
下のテーブルはスクロールできます
指標 実績 2030年度の目標
Scope1+2+3 157,973 t-CO₂ -
 Scope1+2 32,470 t-CO₂ 22,000 t-CO₂以下
  Scope1 21,535 t-CO₂ -
  Scope2 (マーケット基準) 10,935 t-CO₂ -
 Scope3 125,502 t-CO₂ -
売上高基準Scope1+2 1.9 t-CO₂/M円 1.3 t-CO₂/M円以下
再生可能エネルギーの利用率 29% 17%以上
Scope1+2排出量(日本国内)
売上高基準Scope1+2排出量(日本国内)
Scope3排出量 2024年度(日本国内)
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Category 項目 t-CO₂ 算定拠点 排出係数の取得方法 備考
1 購入した製品・サービス 96,009 戸田工業 IDEA※ Ver.2.3 算出対象の費目は、調達金額の上位90%以上
東京色材工業
2 資本財 1,713 戸田工業 環境省_排出原単位データベース -
3 調達している燃料の上流 8,788 戸田工業 IDEA Ver.2.3
環境省_排出原単位データベース
-
東京色材工業
4 輸送、配送(上流) 4,833 戸田工業 環境省_排出原単位データベース 算出対象は、調達数量上位から90%以上
東京色材工業
5 事業から出る廃棄物 264 戸田工業 IDEA Ver.2.3
環境省_排出原単位データベース
算定対象は、生産拠点のみ
東京色材工業
6 出張 231 戸田工業 IDEA Ver.2.3
環境省_排出原単位データベース
-
7 雇用者の通勤 215 戸田工業 環境省_排出原単位データベース 都市区分、従業員数、勤務日数より推計
東京色材工業
戸田ファインテック
8 リース資産(上流) 対象外 - - -
9 輸送、配送(下流) 1,299 戸田工業 環境省_排出原単位データベース 取引数量の多い取引先の排出量をもとに推計
10 販売した製品の加工 対象外 - - -
11 販売した製品の使用 対象外 - - -
12 販売した製品の廃棄 12,150 戸田工業 IDEA Ver.2.3
環境省_排出原単位データベース
-
東京色材工業
13 リース資産(下流) 対象外 - - -
14 フランチャイズ 対象外 - - -
15 投資 対象外 - - -
- その他(任意) 対象外 - - -
合計 125,502 - - -
  • IDEA 日本の全ての製品・サービス(農・林・水産物、工業製品等)の環境負荷物質を定量できるデータベース